転職成功者インタビュー

株式会社プラセス
岡本光次さん(仮名・技術営業) 35歳

海外営業から技術者へ。自分を本当に必要としてくれる会社は、日本の地方にあった。

岡本光次さん(仮名)は、タイから愛知県に転職したリージョナルヒーローだ。前職は商社の海外営業。新卒で入社後、すぐに中国へ配属。その後、タイへ異動になり、一度も国内勤務がないまま、海外勤務を3年続けていた。異国の駐在オフィスにいる日本人は、自分1人だけ。孤独な環境や、いつまで続くかわからない海外生活に不安を感じるようになった岡本さんは、会社に対し、「一度、日本に戻してほしい」という希望を出したものの、返ってきた答えは「日本にきみのポジションはない」。だったら、自分で探せばいい―。そう決意して転職活動を始めた岡本さんを待っていたのは、想像もしていなかった出会いだった。タイから愛知へ。営業から技術職へ。未知なる世界に果敢に飛び込んだ岡本さんの体験談を伺った。(※本記事の内容は、2018年8月取材時点の情報に基づき構成しています)

過去の
転職回数
1回
活動期間
エントリーから内定まで40日間

転職前

業種
工業部品商社
職種
営業職
業務内容
タイの駐在事務所にて、日系自動車メーカー向けに現地メーカーが生産する部品の提案営業、供給。現地スタッフのマネジメント。

転職後

業種
プラスチック部品メーカー
職種
技術営業職
業務内容
クライアントの要望をヒアリング、製品の仕様決め、設定者への指示。部品開発~量産化までの道筋づくり。

きっかけは将来への不安。「この生活を続けて、自分に何が残るんだろう?」

現在のお仕事はどんな内容ですか?

プラスチック部品のメーカーで、金型を作る技術者をしています。当社が作っているのは、主に自動車部品です。例えば運転席についている様々なスイッチや、シフトノブなど、自動車にはたくさんのプラスチック部品が使用されています。私の仕事は、「こんな部品を作ってほしい」という取引先の要望をヒアリングし、具体的な仕様を決め、設計者に指示をしていくこと。また試作品ができたら量産化するための道筋を作っていくことも、私の大事な仕事です。海外からも注文がくるので、私1人で常に15から20個の部品開発を同時進行しています。

入社前のご経歴を教えてください。

東京にある高校と大学を卒業後、北海道の大学院で国際政治を学びました。その後、29歳で初めて就職したのが、香港に本社がある日系の商社。職種は営業で、今と同じようなプラスチック部品を扱っていました。中国に半年、タイに2年半駐在しながら、現地メーカーと日本のメーカーをつなぐ仕事をしていました。

転職のきっかけは?

前の会社は、海外で働きたいという希望があったので就職したんです。でも入社してみると、本当に小さな商社で、タイの駐在所も日本人は私1人だけ。仕事はもちろん、社会人としての教育をしてくれる上司や先輩が全くいない状態でずっと働いていました。そのうちに「この環境で働いていて、成長できるのか?」と、だんだん心配になってきたんです。まわりを見ても、何十年も海外生活という人が多く、「このまま日本に帰れないのでは?」という不安もありました。タイにいるときに結婚したんですが、それからはますます「日本に帰りたい」という気持ちが強くなりました。家族を養っていくためには、海外を転々とする生活ではなく、「日本にしっかりとした基盤を作りたい」という気持ちがわいてきたからです。自分もいつかは年をとります。ところが老後のことを考えると、今のままでは、仕事の人間関係しかありません。会社以外にコミュニティがなく、日本に自分の居場所がないわけです。考えた末、会社に日本への異動希望を出したのですが、「日本にはきみのポジションはない」といわれてしまいました。「だったら、日本で自分を必要としてくれる会社を探します!」と宣言したんです。

なぜ愛知を希望されたんですか?

自分の親が三重県に住んでいたので、東海三県で転職できればと考えたんです。東京に戻るという選択は考えませんでしたね。家賃も高く、東京で生活を成り立たせるのは難しいと思いました。

転職活動はどのように進めましたか?

タイにいながら転職活動を進めなければいけなかったので、まずは転職サイトに登録しました。すると複数の転職エージェントからメールが来るようになったので、そのうちの3つのエージェントと連絡をとり、Skypeで面談をしました。その後、たまっていた有給休暇を全部使って日本に帰り、2社の面接を受けました。今の会社と、もう1社も自動車部品メーカーでした。

今の会社に決めたポイントは?

ポイントの1つは、技術職としての採用に魅力を感じたことです。募集職種は営業でしたし、自分も営業になるつもりで面接を受けましたが、内定をいただいたときに、「技術者をやってみませんか?」と誘われたんですよ。SPIなどのテストの結果を見て、私には技術者の方が向いていると評価してくれたようです。

その提案に、どう思いました?

とても驚きました。大学も文系でしたし、技術者になるなんて想像もしたことがありませんでした。その一方で、自分の新たな可能性を見出してくれたことは嬉しかったですね。そこまで自分のことをちゃんと見てくれ、提案してもらえるのなら、これからの人生、この会社で頑張ってみようと思いました。

未知の職種は不安ではありませんでしたか?

もちろん不安はありました。ただ、会社としても、知識がない人間が入社してくるのは初めてではないんですね。そもそも「学校で金型作りを学んできた」という新卒者はいないんですよ。金型づくりというのは、誰もが未経験からのスタート。そういった社員を教育するプログラムが社内にしっかりあるわけですから、自分もチャレンジできるのではないかと思ったんです。

新しい“ふるさと”で、技術者としてさらなる成長を目指す

転職していかがですか?

最初の数週間は金型部品の名前を覚えるところから始めました。その後は現場に入り、先輩について仕事を覚えていきました。人手不足ということもあって、入社1か月後には初めての担当を持ちました。なにもかもわからない状態だったので、「持ち帰って検討します」とお客さんに答えてばかりだったのを覚えています(笑)。今は3年目。先輩たちに比べたらまだまだ未熟なところがたくさんありますが、比較的早く自分の居場所は作れたかなと思っています。海外のメーカーからも仕事が来るのですが、海外の設計者と英語で打ち合わせができるのは、今のところ私1人だけ。英語ができるのは、技術者としても1つの強みになっています。なにより、ものづくりの仕事はとても面白いです。この道で専門性を磨いていけば、いいキャリアを歩めそうだという感覚がありますし、しっかり学び、極めていくことで、次の世代にもこの技術をつないでいきたいと思っています。

転職して良かったと思うことは?

いまの会社が勧めてくれた通り、営業として数字を追いかけるより、製造現場でものづくりにどっぷり浸る今の仕事のほうが自分にはあっていると思います。また今は、いろんな勉強もできています。前の職場では、先輩や上司と一緒に仕事をしたり、学んだりということがほとんどありませんでした。でも今は毎日、先輩や上司から多くのことを学べていますし、「もっと成長しなくちゃならない、がんばろう!」というモチベーションもあります。転職してからとても前向きに働けるようになりましたね。専門的な技術を習得することで、これからの人生、地に足をつけて歩いていけそうだという実感があるからでしょうか。またプライベートの面でも、このまちで自分たちの根を張っていけるという安心感がありますね。豊川が私たちの新しいふるさと。子どもができればもっと地域との接点ができるだろうと、楽しみにしています。

困っていることや課題はありますか?

仕事は困ったことだらけでしたね(笑)。全く経験がないまま飛び込んだので、振り返ると、死に物狂いの2年半でした。でも、毎日が充実していたので後悔はありませんでした。今後の課題があるとすれば、残業が多いことだと思います。そこも自分しだいだと思うので、もっと能力を上げていきたいと思っています。

生活面の変化はありましたか?

現在は愛知県豊川市のマンションで暮らしています。タイでは都会に住んでいたのですが、豊川は静かで落ち着きますね。車で10分も行けばホタルが飛ぶ川辺があるんです。豊かな自然が残っているし、生活機能も揃っているので、とても暮らしやすいまちですよ。転職して休日の過ごし方も変わりました。タイで働いていた頃は休みの日も疲れてぐったりしていましたが、今は妻とあちこちドライブに出かけたり、会社の人と草野球を楽しんだりしています。

転職を考えている人にアドバイスをお願いします。

安易に環境を変えるのはどうかとは思いますが、このままでは自分や家族のためによくないと判断できるのであれば、勇気をもって行動するのもいいのではないでしょうか。迷ったときは、周りのいろいろな人に相談したらいいと思います。私の場合、全員が「そうすべきだ」と言ってくれたんです。そうやって信頼できる人たちに背中を押してもらうのも、行動するきっかけになると思います。その後、私は初めてのものづくりの世界に飛び込んだわけですが、経験ゼロから、若い人たちに混じってやるのは、簡単なことではありませんでした。ただ、何かチャレンジしないと何も変わらないという気持ちでいましたし、これを続けていけば必ず自分に身につくものがある、という実感があったんです。それが、頑張れた理由だと思います。自分自身のなかに明確な目的があれば、たいていの苦労は乗り越えられると、私は自分の経験を通して思っています。

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