名南共同エネルギー株式会社
友田誠さん(仮名・経営管理/購買職) 26歳
大手か中小かは関係ない。大切にしたいことを見極めたからこそ見つけた、自分の新フィールド。
筑波大学の大学院を卒業し、誰もが羨むような大手企業に就職した友田さん。しかし、実際に現場で働いてみると仕事のやり方が古く、改善できるところがたくさんあった。いくつか改善案を提案してみたものの、ビジネスモデルが確立しているため、やり方を変えることに抵抗があるベテラン社員や上長に聞き流されていた。
「このままではモチベーションが阻害される。」そう悩んでいた時、もっと自分が活躍できる場所があるかもしれないと思い立ち、転職活動をスタートする。そんな友田さんの転職活動について、詳しく伺った。
(※本記事の内容は、2022年9月取材時点の情報に基づき構成しています)
- 過去の
転職回数 - 0回
- 活動期間
- エントリーから内定まで93日間
転職前
- 業種
- 石油
- 職種
- 施工管理
- 業務内容
- 社内に工事を行う際の社内の工事計画立案および施工管理業者のコントロール業務
転職後
- 業種
- 発電(エネルギー)
- 職種
- 経営管理、購買業務
- 業務内容
- 経営計画策定およびコスト削減業務。 直近は蒸気を精製する際に使用する石炭の購買業務にも従事
自分の意見を議論し、成長できる環境を求めて転職を決意。
現在のお仕事はどんな内容ですか?
私が勤務している「名南共同エネルギー」は、名南コンビナートという工場地域で、海外から購入した石炭を燃料にして、蒸気や電気を作り近隣の工場に供給しています。
名南コンビナートでは、食品や飼料、医薬品などの原料を製造する工場があり、製造工程で使用する蒸気を供給する各所ボイラーを焚いて蒸気を作り使用していました。しかし、各社で蒸気を作ることは経済性が良くないため、まとめて各社へ安価で提供できるよう、当社が作られたという経緯があります。
私は入社して約4ヶ月が経ち、通勤は本社のある知多市まで、車で一時間ほどかけて通っています。担当は、経営管理と石炭の調達。石炭は複数の場所から輸入するのですが、年間で何トン、どの割合で調達するのか、どういった頻度で船は何船出すかなどの計画を立て、契約を交わすための書類を作成しています。
一方、工場が排出するCO2を削減する方法を考える、という仕事もあります。廃材にバイオマスを混ぜることで削減を促したり、カーボンオフセットという考え方を取り入れ、実質ゼロになるよう検討したりしています。
入社前のご経歴を教えてください。
出身は埼玉県です。筑波大学に進学し、その後大学院へ進学しました。大学ではコンクリート工学、構造力学、建物と地震被害の相関性などを学びました。
研究では鉄筋コンクリート模型を作り、実際の地震動挙動で動的に揺らし地震被害の相関性について調査していました。調査していくなかで、もっとミクロな視点で破壊の原理やプロセスを学びたくなり、大学院では材料力学、破壊力学、有限要素法、C言語など学びながら金属の延性脆性遷移挙動について研究していました。
そして新卒で入社したのは、石油製品を精製・販売する、大手のエネルギー系企業。就職活動当時から興味があったのはエネルギーの精製プロセスなどではなく、保守保全業であったため、保全業務に携わっていました。
設備の補修工事や点検工事の仕様書の作成をはじめ、現場管理や工程管理などを務めていました。さらに、設備や配管の肉厚を測り、「何年間でこれだけ減っているから、この建物寿命はこのくらい」というような寿命検査予測や、腐食環境に対する適切な対策などの検討をしていました。
転職のきっかけは?
前職は大手企業だったので、トップダウンの体質が強かったです。「下からも意見を言うように」と言われていましたが、実際に自分の業務の進め方について上司に改善策を伝えても、その意見の行き先はなかったようで・・・。結局、自分の意見について議論する機会が少なく、改善していこうという気持ちは段々となくなっていき、モチベーションが低下していく、と感じていました。
また、もっと自分が能動的に動いて活躍できる場所に移りたいと感じていました。大手企業というのは業務が非常に細分化されていて、誰でも作業ができるようにマニュアル化され、流れ作業になっていました。
そのため、決裁権は若手ではなかなか持てず、上長を通してやらなくてはいけないことばかりでスピード感が遅いなと思っていました。また、ビジネスモデルがしっかりしているので、社員は言われた通り動いていればいいのかなと感じました。
それから、会社の福利厚生の制度が変わることになり、自分にとってメリットが減ったと感じたことも理由の一つでした。以前は持ち家であっても住宅補助が出て、子ども手当などもあったのですが、その補助がなくなることになりました。
この福利厚生が変わる理由としては、「実力に見合った給料を支払う」とのことでした。そのため基本給を上げるということでしたが、無くなった福利厚生分を上げているだけで、それに伴い税金も上がりますから実質の手取りが下がる可能性もあります。
実力主義になったと言いつつも、結局等級を上げるためには最低勤続年数があったり、一年の昇給額も最大値が決まっていたりと、変更理由との矛盾を感じていました。
転職活動はどのように進めましたか?
転職活動を始めた時、まだ新卒入社して1年半ほどしか経っていなかったので、すぐに転職できるとは思っていませんでした。
ただ、今後転職したいと思った時にすぐ動けるように、情報収集というスタンスで、とりあえず某転職サイトに登録しました。すぐにさまざまな転職コンサルタントが連絡をくださったのですが、その中の一人がリージョナルキャリア愛知(株式会社リンク・アンビション)のコンサルタント、花木さんでした。
花木さんは、どんな理由でどうして転職したいのか、どこを基盤に転職活動したいかなど、よく話を聞いてくださいました。そして、私が感じている不満は大手企業に多い悩みなのだという指摘など、他の転職支援会社ではなかったアドバイスをもらいました。そういった面で、中小企業であれば良いところもあるよと教えてくれました。
入社面談に関しては、いつしたのだろう?という感じでしたね。ある日、花木さんと私、そして私と同じような理由で当社に入社した先輩社員の3人で話す機会を設けてくださいました。その際、前職で感じていたさまざまな想いを伝えたのですが、その時に聞いた先輩の話がとても興味深く、刺激になりました。
その頃には「ここなら楽しんで仕事ができそう」という気持ちになっていました。その後、社長と部長を含め、ざっくばらんな雰囲気の座談会があったのですが、その後内定をいただきました。今思えばあの座談会が最終面接だったのかなと思います。
今の会社に決めたポイントは?
まず転勤がないこと。以前暮らしていたのは三重県で、妻の生活基盤や仕事のコミュニティが東海エリアに出来上がっているので、そこを離れない方がいいと思っていました。
そして、大きな会社ではないので、自分もさまざまな決定権を持って仕事ができそうだな、というところ。大手企業では若い人が決済権を持つのはなかなか難しいですが、今の会社であれば自分の意見も聞いてくれそうだなと思いました。
実際には入社して4ヶ月ほどなので、まだそんなに実感はしていませんが、自分の意思を伝えると「それでいこう」と言ってもらえることもあります。そして、もっと勉強していけばさらに任せてもらえる、という期待感もあります。
それから、経営管理を任せてもらえるということ。大手企業であればトップで止まっているような経営者サイドの情報も、今の会社では私も共有してもらっています。会社にとっての重要な話が聞けることが嬉しく、毎日とても刺激的です。
大切なのは、自分が本当に求めるものをクリアにすること。
転職していかがですか?
満足度はかなり高いですね。まず、前職で感じていた閉塞感は払拭できたかなと思います。会社の規模が小さめで社員数も少ないので、一人ひとり決定権を持っているなと感じます。
運転や保全担当の方も、プラントを正常に動かすことを視野に入れた意見をしっかりと持っており、どんな立場の方でも、しっかりと意見を主張し合える風土があると思います。
前職とはまったく職種が異なる経営管理をしているため、自分の考えをきちんと伝える必要があります。それに対して、前向きに捉えてくれ、より良い方向へ向かうようにアドバイスをもらうこともあり、手ごたえを感じています。加えて、社内の人数が少ないので、新しいことを始める際も非常に動きやすいと感じています。
前職の保全の仕事も好きだったので、最近はお手伝いをさせてもらうようになりました。保全の仕事では、前職の知識が活かせていると感じますね。そんな風に幅広く仕事ができるというのも魅力だと思います。
転職して良かったと思うことは?
転職活動前に期待していたものは、ほぼ得られていると思います。ワークライフバランスに関しては、前職ではしっかりとれていたため、転職することで崩れないかの不安もありましたが、今も問題ないです。
今は、ほぼ定時に帰ることができ、残業をするとしても30分から1時間ほど。毎日17時〜18時には帰ることができています。むしろ、テレワークがしやすくワークライフバランスはよくなりました。
コロナ禍特有の対応かもしれませんが、現在月の半分くらいはテレワークです。通勤に1時間以上かかるので、テレワークの日は嬉しいです。どうしても出社しなくてはいけない日があれば、出社日とテレワーク日をチェンジすることもできます。
入社したての頃は、会社に行かないと何もわからないし、誰にも質問できないのではないかと不安になったこともありましたが、実際は問題なく仕事を進められていると思います。
困っていることや課題はありますか?
経営にまつわる仕事をしたことがなかったので、経営関係の資料、決算書やPLなどの注目しなければならないポイントの感覚がまだつかめていません。前職も現職同様エネルギー業界にいたのですが、仕事内容は設備や配管などの保全だったので、ビジネス的なことがわかっていませんでした。ですから、いま猛勉強しています。
それから、電気の業界には専門用語が多くあり、用語の理解が追い付かないことがあります。学ぶことはたくさんあるなと感じていて、楽しいです。
社内は中途入社が多い印象で、さまざまな経歴を持った方が集まっています。以前、噂で「前職ではこうだった」という話を転職先でするのは良くない、という話を聞いたことがあったのですが、実際はまったくそんなことはなかったです。普通に前職での経験を話していますよ。
生活面の変化はありましたか?
私は大学生の頃から、趣味でジャグリングやバルーンアートをしているのですが、どこかの場所で腰を据え、地域活動を続けていきたいという想いがありました。だから、転勤がない会社へ移りたいという気持ちもあったんです。
プロとして大道芸や劇場に出るというものではなく、あくまでも地域の活動として、幼稚園や保育園へ行ってちょっとしたイベントに出たり、地域のお祭りに参加したり、したくて。
先日、ついに引っ越し先でその一歩を踏み出しました。実際にボランティア団体が主催するイベントに参加したんです。この場所で始められて、本当に嬉しかったですね。子どもたちと触れ合うのって、とても楽しい。バルーンアートをプレゼントするとすごく喜んでくれるんです。
それから、先日試用期間が終わって正式採用されたこともあり、結婚しました。転職活動をしている間は三重県で同棲していたのですが、転職に伴い名古屋に引っ越しました。なので、生活スタイル自体はほとんど変わっていないですね。
東海地方は予約不要のバーベキュー場やキャンプ場が多く、気軽に出かけられるので気に入っています。私は埼玉出身で大学も関東だったので、自分のコミュニティは関東にありますが、関東には遊びに行くだけで、今は関東に住まなくてもいいかなと思っています。
転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
転職というのは、何かしらの不満があるから考えること。その不満というのは、細かな部分で少しずつ蓄積されてきたものだから、解消するのは難しいと思います。しかし、その不満が何なのか、きちんと把握しないと転職先でも同じことが起こるかもしれません。
人には「絶対に曲げられない部分」があると思います。また、「曲げられないという程ではないが、干渉されると不満になる部分」もあるでしょう。転職を考え始めた頃は、そういったものが混ざり、混沌とした不満を持っている可能性があります。
そのため、そういった不満を紐解くのは必要だと思います。その人にしかわからない、曲げられない部分というのは何なのか、転職コンサルタントと対話することによって、自分で理解することが大切です。実際に会社を探すのは、その後でいいと思いますよ。
不満が漠然とした状態だと、その会社の問題なのか、どこに行っても解消されない問題なのかもわからないと思います。その問題を定義することで、転職した方がいい場合もあるし、逆に「今の会社の方がいいのではないか」ということになるかもしれません。
自分が大切にしたいポイントを知ることができる。これが転職活動のいいところではないでしょうか。大手から中小に転職するのはもったいないと言う人がいますが、そんなことはないと思います(笑)。企業規模や年収よりも大切なことがある、と私は思っています。